消費税について考える

消費税廃止、果たして現実的なのか?

 消費税を廃止すべきか否か――この議論は、日本の財政や国民生活をめぐる極めて重要な論点である。とりわけ、近年の物価高や実質賃金の低迷を背景に、消費税の是非を問い直す声が強まっている。
 シンプルに消費税は廃止した方が経済が刺激されて良いのでは?と思っているが、仮に「消費税を完全に廃止」した場合、どのような影響が考えられるのだろうか。


国の歳入はどうなるのか?

 最も直接的な影響は、国家財政である。2024年度予算案ベースで見ると、消費税収はおよそ23兆円。これは所得税(約22兆円)や法人税(約13兆円)を上回る、最大の税収源となっている。この消費税を廃止すれば、その分の財源が丸ごと失われる。
 財源が失われるということは、医療、福祉、教育、防衛などあらゆる国家事業への影響が避けられない。特に社会保障費の財源として消費税が重視されている現在、その代替をどう確保するかが問われることになる。ちなみに、国家財政は赤字なのはいつもの通り。

① 歳入(収入)

  • 一般会計の歳入は約112.6兆円。そのうち、税収等が約2/3、すなわち約75兆円前後、残りは約1/3を国債(借金)によって賄っている。

② 歳出(支出)

補正予算などで約13.9兆円分の支出が追加された。総額115.5兆円。主に以下の3分野で歳出の約75%を占める。

社会保障費(年金・医療・介護)

地方交付税

国債費(借金返済)


経済への刺激効果は?

 一方で、消費税の廃止がもたらすプラスの面もある。家計の可処分所得が増え、個人消費が刺激される可能性がある。とくに所得が低い層にとっては、消費税は相対的に負担が重く、廃止すれば生活の余裕が生まれる。また、企業側も消費税分の価格表示や納税義務がなくなり、事務コストの削減が期待される。こうした経済刺激効果が、短期的には景気を押し上げる可能性は否定できない。


富裕層優遇との批判も

 ただし、消費税廃止には「逆進性の是正」という大義名分はあるものの、それだけでは済まない問題も含んでいる。たとえば、高額な商品を購入する富裕層ほど消費税廃止の恩恵を受けやすくなる。この点については、所得再分配の観点から「富裕層優遇ではないか」といった批判が出る可能性がある。
 とはいえ、富裕層の人口比を考えればそんなことに構っていられないのではないか、というくらい不景気が続いているのも事実である。


代替財源として法人税はなり得るのか?

 現実的な課題として、代替財源の確保がある。輸出をしている企業には「輸出免税」として、消費税を支払わず、逆に海外販売時に海外で負担された消費税の還付を受けられる仕組みがあるので、企業が悪者という論調が出ている。そのため真っ先に所得税や法人税を増税するという選択肢もあるが、それはそれで「勤労意欲の減退」「企業の海外流出」などを引き起こしかねないという意見がある。
 とはいえ、昔は法人税は50%近くあった。どうせ税金で取られるなら、という観点から従業員にボーナスという形で還元されていた。それが、国際競争力をつけるためという理由で段階的に法人税が下げられていった背景がある。
 個人的にはすでに国際競争力も技術、円の価値ともに落ちているのだから、やるだけやってみればとは思うのだが、法人税を上げると株価の下落、法人の海外移転も考えられる。あれだけ国が「NISAだぞ、投資をしろ」と謳っているところで、全国民が含み損を掴まされると大騒動になる。
 つまり、雇用を守ってやってるんだからお前ら庶民が金(税金)を払えよ、という雇用が人質になっているパターンと、貯蓄が人質になっているパターンの2パターンで、それらに対して「良いから撃ってみろよ」と言えるかどうかだ。

 ここまで含めて消費税について議論が出来る人がどれだけいるかどうか。「廃止」でも「継続」でも個人的には結果はむしろどうでも良い。それよりも「お金がないから」という眼の前の短期的な事や感情で「消費税廃止」と言ってるスタンスが知性の低さを感じる。
 これらの現状とリスクを踏まえた上で「廃止」にしたなら、その結果が仮に期待はずれだったとしても、甘んじて受けるかどうか。その覚悟とセットで消費税を廃止にすべきではないだろうか。

松井証券

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