
セカンドオピニオン
治療方針に納得がいかなかったり、主治医との相性に不安を感じたりしたときに、「他の医師の意見も聞いてみたい」と思うのは、ごく自然なことです。
多くの病院には「医療支援センター」などの名前の窓口があり、主治医に相談することで、希望する病院にセカンドオピニオンを申し込むことができます。勝手に他の病院を受診することは、基本的におすすめしません。
これまでの検査データや治療経過が共有されないまま診察を受けても、十分な判断ができなかったり、かえって混乱を招いたりすることがあります。
現在の主治医も、基本的にはあなたの健康回復を第一に考えているはずです。セカンドオピニオンを希望すること自体を否定する医師は、ほとんどいません。また、セカンドオピニオン=転院・主治医変更ではありません。
あくまで第三者の医師から意見を聞き、今後の治療の参考にするという位置づけです。もしその結果、別の医師のもとで治療を受けたい場合には、改めて紹介状をもらい、正式な手続きを経て転院することになります。
どこに聞くべきか?
たとえば私の場合、最初に腫瘍が悪性かどうか不明だったため、通常の切除範囲で腫瘍を取り除く手術を受けました。その後、悪性と判明したため、「改めて開腹手術で広く郭清しましょう」という話になりました。
ところが私はヒルシュスプルング病の手術歴があり、開腹手術は癒着のリスクが高く、非常に困難になることが予想されました。しかも肛門管癌なのに、みぞおちから下腹部まで広く切るという説明を受け、「それではQOL(生活の質)が大きく下がるのは間違いないし、最悪の場合、命にも関わるのでは」と強い不安を感じました。
「何とか切らずに済む方法はないか」と思い、別の大学病院でセカンドオピニオンを受けました。ただ、当時の私は医療に関して素人だったため、「外科→外科」という同じ診療科でのセカンドオピニオンとなり、結果的に「やはり切りましょう」という結論に至りました。
外科は標準治療としての「切除」を担う部門ですから、基本的には手術ありきの提案になります。もちろん、切り方には違いがあるかもしれませんが、前提として「切る」方針であることに変わりはありません。
そこで私は主治医に頭を下げて「放射線科の意見も聞いてみたい」とお願いし、改めて別の大学病院の放射線科を訪ねました。そこで「肛門管癌に小線源治療を応用できるかもしれない」という話になり、転院を決意しました。
結果的に外科の主治医の機嫌を少し損ねてしまったかもしれませんが、それでも私は、開腹の範囲やQOLを考慮して、手術には大きな不安を抱いていたのです。
私の場合は、QOLの低下や命のリスクを重く見てセカンドオピニオンを選びました。ただし、これが単に「手術が怖いから嫌だ」という感情的な理由だけであれば、少し事情は変わっていたかもしれません。
セカンドオピニオンは、「標準治療の妥当性」や「他に選択肢があるかどうか」を冷静に確認するためのものです。
たとえば、「◯◯を食べるだけで治るらしい」などという根拠のない民間療法を信じて治療を避けるような話とは、まったく次元が異なります。
※標準治療についての詳しい話は、「がんと情報収集2」もご覧ください。
https://asplus.biz/tama/archives/379
なお、セカンドオピニオンを受ける最適なタイミングは、主治医から治療方針(ファーストオピニオン)の説明を受けた直後です。
そして主治医は国家資格を持つ医療のプロです。もし話しやすそうな医師であれば、「何が心配か」「何が怖いか」などを素直に聞いてみるのも良いと思います。
特に近年はコンプライアンスも徹底されており、きちんとした大病院の医師であれば、真剣に話を聞いてくれるはずです。