
パナソニックHDが1万人の人員削減を発表している。(Yahooニュース)
単純に数字だけ見れば黒字なので、将来を見据えて早いうちに手を打っておこう、という経営者側の意図がある。こういった何かしらの人員削減のニュースは定期的に見かける。競争力であったり、収支改善であったり、言い分は様々であるが、どうも個人的には納得できない。
今回のパナソニックHDの人員削減について感じたことを以下に述べたい。
①採用人数に納得できない
別に採用人数を細かく調べた訳では無いが、仕事で取引先にいくと「これまで求人を出してこなかったような学校にまで求人票を出してきて、我々のような中小企業はブランドと待遇にやられて太刀打ちできない」という人員確保の難しさの愚痴を何度も聞いてきた。実際パナソニックもそうだ。関西の工場の取引先に直に言われた文句である。
このようにこれまで手を伸ばしてこなかったエリアにまで求人を出して若い人材をかっさらう一方で人員削減というのはいかがなものか。松下幸之助の言う「不況またよし」「1人も解雇してはならない」という教えはどこにいったのか。
②余裕がない組織は続かない
一見暇そうな社員も実は緊急時には役に立つ、育休や産休での穴埋めに組織が疲弊している、といった声をSNS上ではよく見かける。パナソニックのような大企業が知らないわけがあるまい。精神的、肉体的な余力がなくなってしまっては短期的な成果は上がっても、長期的には必ず疲弊する。
③まだまだ中高年は雇用流動性が悪い
日本での転職市場を考えるとまだまだ中高年は分が悪い。やれ適応力が落ちているだの、やれ人件費が高いだの、やれ経験が足りないだのと、簡単には就職は出来ないし、中高年の転職で年収がアップするのも難しいというデータがある。(厚生労働省雇用動向調査結果の概況)
つまりある一定の年齢になれば少々待遇が悪くなっても会社にしがみつく方が良いという考え方も出来る一方で、若手にとっては売り手市場であるから、優秀な若い人材は流出していく。結果、長い目で見れば技術や競争力は低下していく。
④そもそも日本は海外のやり方に合わない
パナソニックHDの話とはズレるが、人件費を抑えるためにこういった人員削減であったり、給料を能力給にしたりというのは欧米に倣ってかなり前から当たり前になった手法ではあるが、滅私奉公の文化、島国根性が根強い文化圏では正直そのまま輸入するのは合わない。
ざっと4つあげてみたが、いずれもただちに影響がないというのが厄介なところで、10年、20年先にジワジワと効いてくる。その頃には今の経営陣はいなくなっているだろう。