日産の役員数は多すぎるのか

日産の「役員肥大化」はなぜ起きたか

 日産の取締役・執行役員の数は、かつてのゴーン体制から現在に至るまで、グローバル展開の中で次第に増加してきた。2010年代半ば以降は、海外事業の拡大やアライアンス経営(日産・ルノー・三菱の3社連携)の中で、国・地域ごとに責任者を設ける形で執行体制が多層的になった。

 その結果、取締役会・執行役会合わせて約30名近い役員陣が社内に存在するという、他の日本企業と比較しても異例の多さになっている。参考までに、トヨタの執行役員数は十数名規模であり、ホンダやマツダも20名を下回る。


意思決定の“遅延装置”になっていないか

 役員数の多さは一見すると「多様な視点」「リスク分散」といった利点を想起させるかもしれない。しかし、実際には逆効果を生む場面も少なくない。

 複数の意思決定ラインが交錯することで、重要な経営判断が遅れたり、誰が最終的な責任を負うのか不透明になるケースが増えている。ある日産の元幹部は、「資料を通すだけで数週間がかかることもあった。機動力は完全に失われていた」と証言している。

 このような状態では、EV市場のような変化の早い分野において、勝負に出るタイミングを逃してしまうのは当然である。


経営責任の所在が曖昧に

 役員が多いということは、それだけ責任の所在が分散されやすくなる。特に2020年代前半には、カルロス・ゴーン氏の逮捕と退任の後、経営体制が混乱し、複数の副社長や共同CEOという“集団リーダー制”が取られていた時期があった。
 だが、そうした「合議制」は、時としてリスクを回避するあまり、誰も明確な方向性を打ち出せない状況を生んでしまう。実際、業績不振が続いていた間に、リーダーシップ不足や社内調整の迷走が指摘されていた。


経営スリム化は改革の一丁目一番地

 今回の「Re:Nissan」では人員削減や工場統廃合が注目を集めているが、真に注視すべきは経営陣のスリム化である。トップの意思が迅速に現場へ届き、責任と成果が明確に紐づく組織に変えられるかどうか。これは今後の企業再生の成否を左右する最重要課題である。
 個人的な見解として、日産が再び「技術の日産」として蘇るためには、「人数の多さ」ではなく「意思の明確さ」「責任の明示」が必要だと考える。経営者の数を減らすことそのものが目的ではないが、少数精鋭で本質を見据える経営体制こそが、いま日産に最も求められている姿勢だと思う。


今後の株価は?

 2025年5月現在、日産自動車(7201)の株価は360円台で推移しており、過去の高値からは大きく下落している。業績不振や構造改革の影響が色濃く反映されているが、果たして今後の株価はどのように推移するのだろうか。
 現在の日産株は、PBR(株価純資産倍率)0.25倍と、非常に割安な水準にある。しかし、これは市場が日産の将来性に対して慎重な見方をしていることの表れでもある。アナリストの目標株価は平均で373円程度とされており、現状の株価と比較しても大きな上昇余地は見込まれていない。株予報P

 2025年3月期の決算では、最終損失が過去最大の6,708億円となり、配当も無配とされた。これは、構造改革に伴う一時的なコスト増加や、主要市場での販売不振が影響している。今後の業績回復が見込まれるまで、配当の再開は難しいとの見方が強い。
 日産の株価は、現在の構造改革の成果や市場環境の変化に大きく左右される状況にある。投資家としては、企業の動向を注視しつつ、リスクとリターンを慎重に評価する姿勢が求められる。日産が再び信頼を取り戻し、持続可能な成長を実現できるかどうかが、今後の株価の行方を左右するだろう。


出典:

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